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あらすじ

自主自律を旨とし、ほとんどの学校行事を生徒が企画・運営しているこの学校では、卒業式も生徒が立案したプランで準備が進められていた。

しかし、式も近づいた2月末になって、突如教師側から「待った」がかかる。
国旗の掲揚と国歌の斉唱を実施してこなかった同校の卒業式が、県の教育委員会で問題になったというのだ。

自分達の案を急に否決され、納得がいかない生徒側。県から指示を受け、実施させなければいけない教師側。
双方とも一歩も引かない膠着状態の中、卒業式は刻一刻と迫ってくる。

そして生徒は、校則の中から「連絡協議会」という制度を持ち出す。
それは、遥か昔、生徒と教師が対立したときに開かれた会議にして、調停のための最後の手段。

かくして、生徒vs教師の直接対決の火蓋が切って落とされた…!


上演にあたって(脚本・演出 冨坂友)

画像 158-01.jpgとうとうこの問題を扱います。
高校時代にこの問題の渦中にいて、学校行事について話しているのに左翼の急先鋒と思われるような青春時代を送った僕としては、いつかは描かなければいけない題材だと思っていました。

本作は、劇団代表作『ナイゲン』に続く「会議もの」ですが、それ以上に「自治」というテーマの部分で、スピリットの部分で、『ナイゲン』の延長線であり発展形です。

なお、国旗国歌そのものの是非を問う話ではありません。学校行事での扱いの是非を問う話でもありません。さらに言えば生徒・先生どちらかの主張を唱える芝居でもありません。
国旗国歌を巡って論争する両者、ひいては彼ら個人個人を、俯瞰して、客観視して、突き放して描きます。

それは「旗色を明らかにしたくない」という逃げでも「公平さを期したい」みたいなフェアプレー気取りでもなく、この作品がシチュエーションコメディだからです。

歌いたい老いも、歌いたくない若きも、歌わせたい男たちも、歌わせたくない女たちも、すべての立場を笑い飛ばす喜劇、生徒と教師の120分一本勝負をはじめます。
(脚本・演出 冨坂友)

自作自演座談会 前篇


「誰も取材してくれないなら、仲間内でとことん語り合う」
そんなDIY精神溢れる、脚本冨坂・文芸助手淺越による自給自足的解題企画『自作自演対談』がさらにパワーアップして復活。今回は謎の役職「相談役」の辻本直樹・安藤達朗両氏も交え、「なぜ日の丸・君が代なのか」「『ナイゲン』とのつながり」など『紅白旗合戦』の狙いと課題に迫る。
今度は座談会だ!これを読めば『紅白旗合戦』がより楽しめる。

メンバー
脚本・演出 冨坂友
文芸助手 淺越岳人(以上アガリスクエンターテイメント)
相談役・音響 安藤達朗
相談役 辻本直樹


相談役とは
冨坂 まずこれは「相談役」について説明がいるな。
淺越 じゃあ簡単に「相談役」に関しての簡単な説明を。
冨坂 、、、おれが相談をしたい人、です。
安藤 本当に簡単だ。
辻本 最初はでもドラマトゥルク(注1)って名前で。
淺越 脚本だけじゃなくて公演全体のデザインを、ウチをよく見れくれてよく知っていてくれる人に、 冨坂が書けない時とかに相談をする役職。
安藤 名実ともにお願いする役職を設けたってことですね。
淺越 チラシにもクレジットされていて、まあお客さんから見たら何のことかわからないとも思うけ ど。
安藤 あれ意外に反響があって、「アガリスクのに名前載ってたけど『相談役』とは」?って。
辻本 安藤君「音響」もついてるからまだいいけど。僕はもはや相談専門の人。
淺越 まず冨坂から『紅白旗合戦』がどんな作品か、あらすじ的なものを。
冨坂 、、、生徒が自分たちのことを自分たちで決めている自由な高校で、卒業式での「国旗・国 歌」の取り扱いで注文が入ったことによって、世間一般の形で国旗・国歌をやらせたい先 生側と、自分たちで決めたやり方でやらせてくれって生徒側と、どういうふうに実施するか で揉める、会議の話ですね。
淺越 相談役のお二人は、企画書とかでこういったものを目にしたときどういう印象をというか、 率直にどう感じました?
辻本 最初に「次国旗と国歌でやります」、て聞いたときには三部作構想(注2)を聞いていたこと もあって、ひょっとして実話をもとにしてやるのかな、てほうが最初の印象で、特に国旗・国 歌ってテーマが際どいからどうこうていうのは、あんまりなかったかも知れない。
安藤 僕のほうは、まずそっちをビビりましたよね。
淺越 国旗と国歌のほうを?
安藤 『ナイゲン(注3)』の話も知っていて、その元となった冨坂さんの高校の対する思い入れの 強さ、「言いたいことある度」の強さみたいなものが、プライベートなモチベーションなんだ けど、結果『ナイゲン』はそれで面白くなっているので「面白そうだな」って期待はあるけど。 でもそれが「国旗掲揚の問題で学校で話 し合う」ってあらすじにしたときにあんまりわか らなくなる。もうちょい説明をつけ足せばわかるようにはなるし、『ナイゲン』観てればわか るのだろうけど、そこの「見えにくさ」が不安になる。タイムリーさもないし。
冨坂 確かに『ナイゲン』観てるか観てないかでこのあらすじの印象はだいぶ違うね。
辻本 僕も『ナイゲン』を経てるから安心して聞けたのかも知れない。
安藤 そういうことも思いつつ、だから最初は暴挙というか尖ってるなあ、と思ったけどよくよく考 えるとアガリスクってもともと尖っていたんじゃないかと。思い直しました。
冨坂 尖っているっていうほど尖ってないんだよなあ。
安藤 でも今まで題材に選んできたものの流れから言っても、こういうことやってきたのかな今ま でも、と思った んですよ。
淺越 最近『ナイゲン』『時をかける稽古場』でだいぶマイルドになっていたから。
安藤 もうちょい前はそれこそ「孤独死(注4)」とか「戦時中(注5)」とか、
辻本 「痴呆(注6)」とか。
安藤 そう。それを思えば今更なにを言おうがもう既にそうじゃん、みたいな。そういう気もした。 忘れてました。
冨坂 でも『ナイゲン』『時かけ』あとコメフェス(注7)とかでウチを知ってくれたお客さんが多いか ら、それによる怖さってのはちょっとあって。その人たちが引くんじゃないかってね。
安藤 しかも「観て引く」じゃないじゃないですか。「観る前に引く」のじゃないかなって。
冨坂 それで客足が減ったらどうしよう、ていうのが一番のビビりですね。
淺越 ちなみにこの国旗・国歌問題って、どのくらい身近っていうか、例えば学校でありました?
辻本 うちではそういう問題になって、ていうのは全然なくて。中学のときかな、同じクラスのヤツ でひとり「俺は 歌わないぞ」って主義のヤツはいた。そいつはなんかまあ、口パクで歌って いたけど。
安藤 僕は恥ずかしながらその問題自体にあんまり興味がなかったのもあるから、全然意識し たことなかったですね。多分これがニュースになったのって僕が高校くらいのときかな、そ ういう行事とかも関わってないですし。だから全然身近じゃないですね。
冨坂 一番問題になったのって、2000年とかかな。
安藤 でもたぶん普通に掲揚もしてたし歌ってたと思うんで。高校でも。
冨坂 そのときって安藤君はまだ中学生だったんじゃないかな。
安藤 そういうこともわかんないくらい、興味がなかったんだと思います。そして問題にもなってな かったんだと思いますね。
辻本 実際今中学とか高校ではどの程度なの?
冨坂 これに関して揉めている人はほぼいない、と言っていいでしょう。
辻本 歌ってるの?
淺越 県にもよりますけど実施率は100%ってことに、なってます。
安藤 だからあの問題って結局、着地したかどうかも知らないんですよ。
淺越 法制定のあと自然消滅て言っていいと思う。国旗・国歌法(注8)ができてから裁判で揉め てるケースもあるけど、そんなに大きなムーヴメントにはなってはいない。過去の問題。
安藤 今喋りながらふっと思いついたんですけど、僕も含めてこの問題に興味ない人って多い じゃないですか。それとこのテーマ危ないんじゃないかってのが繋がっている気がしてい て。多分そういうことを考えている人、思うところがある人は、そういう拒否反応怒らないと 思うんですよ。拒絶反応起こしたりだとか、これはちょっと危ないんじゃないかとかの自主 規制を勝手にする人は問題意識が低い、もしくは身近に感じていない。そんな気がしてき ました。ちょっと持論入ってますけど。この問題に限らず。
淺越 確かにそもそもこの問題ってピンと来ない人が大半だと思ってて、そのつもりでやってはい るのだけど、冨坂はピンと来るピンと来ないではこのテーマを選んでないよね?なんでこ の題材か、てのを確認しとこうよ。
冨坂 えーと、『ナイゲン』をやったときに、、、また『ナイゲン』の話になっちゃうけど。国府台高校 (注9)をモデルにした学校の自治の話がすごいやりたくて。『ナイゲン』ってのは正にその 話なんだけど。でも『ナイゲン』の元になった自分の思い出というか体験というのは、実際 に在学中に経験した国旗と国歌に関する先生との揉め事が元になっているんですよ。だ から一番関心があることを、一番純度高くで出すために選んだ、てことですかね。今この 問題は世間で全く取り沙汰されてないし、やってなにか得するのか、て言われたら得しな いんですけど。なんですかね、一番純度高い状態で出したいな、て。出さないと、いつまで もやらないとやらないような気がしちゃって。
安藤 冨坂さんが関心があるのって、結局学校の自治の問題とか、国府台高校で生徒たちが卒 業式のこととかを自分たちで決める、てそこにあるわけじゃないですか。だから議題が日 の丸とか君が代になっているのはたまたまというか、偶然というか。
冨坂 まあ、そうなんですよね。
淺越 日の丸・君が代の問題によって、自治についての問題が顕在化した、ていうか可視化され た。それを物語的にメタファーで使うんじゃなくて、それをそのまんま出しちゃった。だから 『ナイゲン』より実録ものに近い。
冨坂 『ナイゲン』の「節電エコアクション(注10)」が要するに、「国旗と国歌を普通にやれ」って 言われた、それだったんですよ。
辻本 そこを「節電エコアクション」みたいに実際になかったものとしてボヤかすんじゃなくてその まま書いたのが今回てこと?
冨坂 そういうことです。あと、『ナイゲン』て先生が全く出てこないじゃないですか。先生が「悪の 帝国」みたいにどこか外にいる人だったんですけど。今回はやっぱり先生側も生徒側も両 方描くってのが。
安藤 それは『ナイゲン』のときから書きたいって言ってましたね。
冨坂 そうなんです。


注1…演劇カンパニーにおいて戯曲のリサーチや作品制作に関わる役職。仕事内容が多岐に渡 るうえ定義も曖昧、さらに小洒落た響きが似合わないため使用は見送られた。
注2…『ナイゲン』と今回の『紅白旗合戦』の間に先生サイドのみを描く作品を加え、「国府台高校 三部作」とする構想もあったが、「二作目で特に描くものがない」とのことで崩れた。
注3…アガリスクエンターテイメントで過去三度上演された代表作。文化祭での各クラスの発表内
    容を決める会議コメディ。『紅白旗合戦』と同じく、実際に国府台高校で行われている会議   
    がモデルとなっている。
注4…『無縁バター』とその再演版のこと。孤独死した男の部屋を特殊清掃する男たちを中心にし  
    たコメディ。
注5…『大空襲イヴ』。東京大空襲前日という設定のシチュエーションコメディ。東日本大震災直
    後に上演された。
注6…『ファミリーコンフューザー』。認知症をテーマにしたシチュエーションコメディ。